副業としてライターを始めて早1年。まだまだかけ出しの私は日々、書くことについて頭を悩ませている……。そんなとき、以前、ライティング講座で文章の指導をしてもらった株式会社文道の藤吉豊さん、小川真理子さんの共著『「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。』(日経BP)が10万部のベストセラーに! さらに、藤吉さんは単著『文章力が、最強の武器である。』(SBクリエイティブ)で、文章術のほか、書く上での大切な考え方について書いている。「こうなったら、本人に私の悩みをぶつけてみよう!」と思って突撃してきました。質問が多すぎて全5回になってしまったけど(汗)、最終回を迎えたとき、私は大きく成長している……はず!
おもしろい文章を書くコツは「読者の役に立つこと」
文章を書くとき、いつも悩むのはどうすれば「おもしろく」文章を書けるかということ。そもそも、読者は何を読んで「おもしろい」と感じるんだろう……? 『文章力が、最強の武器である。』では、内容をおもしろくするコツとして「①読者の役に立つこと」「②独自性があること」「③意外性があること」「④信頼性があること」「⑤即効性が期待できること」「⑥読者との距離が近いこと」の6つのポイントが挙げられている。たしかにわかりやすいけど、この6つをすべて実行するのは、初心者の私にはムリ!
「僕は、文章を書くプロセスを大きく2つに分けて考えています。『何を書くか』を考えるプロセスと、『どう書くか」を考えるプロセスです。読者が関心を持つのは、文章の書き方よりも、文章の中身。『どのように書かれてあるか』よりも『何が書かれてあるか』ですから、『何を書けば、おもしろくなるか』を考えるプロセスがとても重要です。
拙著では、『内容をおもしろくするポイント』を6つ紹介しています。どのポイントも大事ですが、僕が特に大切にしているのは、『①読者の役に立つこと』です。ビジネス書や実用書だけでなく、ネットニュース、ブログ、SNSでも、なぜそれを読むのかといえば、知りたいことや、身につけたい知識、解決したい課題があるからですよね。
何か知りたいことがあって読むわけですから、その気持ちを満たす情報を提供するのが、書き手の役割だと思います。何を書けば読者の課題を解決できるのか、何を書けば読者に新しい情報を提供できるのか、何を書けば読者の役に立つのかを意識することが、とても大事です」(藤吉さん)
なるほど。たしかに私が本を手に取るのは、知りたい情報があるときだ。そこから考えればいいのか。そもそも、この「おもしろい」6つのポイントは、どのように見つけだしたんだろう?
「僕の書いた原稿が、編集者やクライアントから『おもしろかった』とか、反対に『つまらなかった』と評価されることがあります。一方、僕がほかのライターさんの書いた原稿を読んだときに、『これはおもしろいな』とか、『つまらないな』と思うこともあります。
おもしろい理由とつまらない理由を僕なりに突き詰めて、『どのような内容だとおもしろいと評価されるのか』を体系化したのが、本書で取り上げた6つのポイントです」(藤吉さん)
自分の体験は「独自性」につながる
ライターとして文章を書く以上、「私ならでは」な要素も欲しい。それがおもしろさにもつながるはずだし。でも正直、独自性を出すにはハイレベルなスキルが必要な気がする。ライター歴が浅い私でも、独自性を出す文章は書けるだろうか?
「独自性を出すには、2つの方法があると僕は考えています。1つは、『独創的なアイデアを書く』こと。2つ目は、『自分の体験を書くこと』です。
ただし、1つ目の『独創的なアイデア』は、簡単には見つかるものではありません。伝えたい情報やノウハウに新しさや独創性が足りない場合は、自分の体験とひも付けてみる。すると、独自性を表現できます。
特別なアイデアを生み出すよりも、『自分は何をしてきたのか』、自分の過去を思い返すほうが独自性は出しやすいと思います。個人的な出来事は自分にしか書けないからです。たとえば、僕と小川はどちらも同じライターという仕事をしていますが、僕と小川の経験には違いがあります。この違いこそ、独自性です」(藤吉さん)
たしかに。自分の経験から得たことや教訓などは自分にしか書けない。過去を思い返しながら書くので、書きやすいという面もあるかな。まだまだかけ出しの身だけど、独自性を出すことで、唯一無二のライターになれるかも? 自身の経験談をブログにアップしていくのもいいかもしれない。
「読者との距離」を意識する
藤吉さんは「読者との距離が近いこと」もポイントの1つに挙げていて、仕事や恋愛など、自分に関係のある内容ほど共感を得やすいとのこと。ただ、もし「野草を食べる」とか、得意なテーマがニッチな場合はどうすれば……?
「僕は、文章のテーマと読者の距離が近いほど、共感を得やすいと考えています。距離とは、『自分に関係があるか、ないか』の尺度のことです。テーマとの距離が近いと、読者は『自分に関係がある』と思うので興味を持ってくれます。反対に距離が遠いと『自分には関係がない』と思うので、読んでもらえません。
たとえば、『風邪を引いたときの食事法』というテーマは、多くの人に関係があるので、読者との距離が近いですよね。一方で、『3歳からはじめるロッククライミング』というテーマは、読者との距離が遠い。そうした要求は多くないからです。
野草をテーマにするのなら、野草を食べることのメリットを挙げてみるのはどうでしょうか。野草と自分(読者)の距離は遠くても、『おいしい』とか、『健康にいい』とか、野草を食べるメリットが『自分にも役に立つ』とわかれば、野草に興味を持つ人が増えてくるはずです」(藤吉さん)
おもしろい文章って、いろいろ考えられているんだなあ。そんなことを考えながら話を聞いていたら、藤吉さんはふとこんなことも付け加えてくれた。
「文章力を磨くと、いろいろな欲求が満たされる気がしています。たとえば、自分の書いた文章が評価されると、承認欲求が満たされる。取材を通して多くの有識者からお話をうかがう中で、知的欲求が満たされる。ライターとして自立したことで、経済的な欲求も満たされました。
それから、誰かが求めている情報を、誰かの役に立つ情報を、誰かを救う情報を文章にして発信することで、貢献欲求を満たすこともできます。自分の成長にも役立つし、経済的にも自立できるし、人の役にも立てるという意味では、文章力を身につけて本当によかったですね」(藤吉さん)
今回で学んだこと(まとめ)
藤吉さんは、私の「書くこと」へのぼんやりとした疑問に、ていねいに、わかりやすく答えてくれた。書けば書くほど、誰かの役にも立つし、自分の成長にもつながる。ライターの仕事って魅力的だな! 次回は「どうやったら伝わるのか」を聞いてみよう。
【ここをチェック】
・文章をおもしろくするコツは6つ。
①読者の役に立つこと
②独自性があること
③意外性があること
④信頼性があること
⑤即効性が期待できること
⑥読者との距離が近いこと
・最初は「①読者の役に立つこと」から考えてみよう!
・文章の独自性=自分の経験
・文章のテーマと読者の距離が近いほど、共感を得やすい
■教えてくれた人
藤吉豊(ふじよし・ゆたか)
株式会社文道、代表取締役
男性情報誌、自動車専門誌、2誌の編集長を歴任。2001年からフリーランスとなり、雑誌、PR誌の制作や、ビジネス書籍の企画・執筆・編集に携わる。インタビュー実績は2000人以上。2006年以降は、ビジネス書籍の編集協力に注力し、200冊以上の書籍のライティングに関わる。大学生や社会人に対して、執筆指導なども行なっている。
小川真理子(おがわ・まりこ)
株式会社文道、取締役
編集プロダクションにて、雑誌や企業PR誌、書籍の編集・ライティングに従事。今までのインタビューの実績は数知れず。得意なジャンルは「生活」全般、自己啓発など。自ら企画編集執筆した本に『親が倒れたときに読む本』(エイ出版)がある。近年は、ライティング講座にも力を注ぐ。
※文道では、2021年10月より女性向けライター養成講座を開催予定。お問い合わせは、info@y-academy.co.jpまで。
■取材・執筆
相田真理(あいた・まり)
女性向けのコミュニティ「富女子会」の運営に携わる。「お金」にまつわるテーマをもとに、イベントや講座の企画、開催に従事。主催した「ライティング講座」で藤吉氏、小川氏よりライティングを学ぶ。のちに「富女子会ライター部」を設立し、17名のメンバーと共に活動中。
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