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  • 執筆者の写真Byakuya Biz Books

ボクシング世界チャンピオンが教える「ファンダムのつくり方」

更新日:2021年8月20日



スポーツでも音楽でも映画でも、業界の発展にファンの存在が不可欠なのは言わずもがなだ。ラグビーワールドカップ2019日本大会がおおいに盛り上がったヒミツは、ラグビー界が一丸となった「にわかファン獲得戦略」にあるともいわれている。ブームを文化として定着させるには相当な時間と労力が必要なのは明白だし、SNSで「つながる」ことが当たりまえになった今、一方通行となる旧来型の情報発信に限界があることは、みんなが気づいている。では、どうすればいいのか? 元・商社マンボクサーの木村悠さんがトライするファンコミュニティーのあり方が、一つの参考になるはずだ。



まずは選手に興味をもってもらう


現役を引退した今、僕は企業顧問、講演、イベントの企画・運営のほか、ライターとしてYAHOO!ニュースでボクシングの記事を書くなど、これまでの経験を生かした活動をしています。


ボクサーは引退すると、たいてい一般企業へ就職します。ボクシング業界に残るのは1割程度ではないでしょうか。いざ引退するときになって次のキャリアを考える人もいますし、引退する前から準備して、キャリアを形成していく人もいます。


僕は業界に残ったわけですが、ボクシングをもっと盛り上げたいという思いがあります。ボクシング全体の状況を見ると、競技人口や観客動員数が減っていて、ジムも経営難のところが少なくありません。


ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級大会で優勝した井上尚弥選手や、竹原慎二さん以来となるミドル級世界王者の村田諒太選手など、一部の選手が活躍すると、業界全体が一時的に活性化することはあります。


ただ、「良い試合を見せれば人が集まる」というのはもう通用しません。飲食店だってそうですよね。おいしい料理を出すだけでお客さんが来てくれるわけじゃありません。お客さんに来てもらうためのアイデアが必要なんです。


僕には世界チャンピオンという肩書きがあります。また、自分の考えを言語化できる、しっかり伝えられるアスリートが少ないこともあって、講演や執筆などの依頼を多くいただける。そのポジションを最大限に生かして、ボクシングのために何ができるか考えました。


これまでの歴史において、日本人の世界チャンピオンは100人に満たない


一つは選手の情報を届けることでボクシングの裾野を広げること。もう一つは選手とファンをつなぐ新しいコミュニティーをつくることです。


ボクシングでは選手にファンがつきます。そのため、ライトなファンに選手を知ってもらえるような情報を発信しています。僕が元選手であることを生かして、選手の目線で伝えるわけです。


YAHOO!ニュースで2~3日に1回、ボクシングの記事を書いていますが、たくさんの方に読んでいただけます。その背景には、コアなファンだけでなく、ライトなファンの存在があります。


ライトなファンにウケる記事は旬のニュースです。今、もっとも勢いがあると言ってもいい井上尚弥選手の記事などは、アクセスランキング(スポーツ)で1位を獲得することもあります。


ただ、それだけでは一過性になってしまいますから、僕はストーリー性のある選手を取り上げた記事もよく書くんです。たとえば、シングルマザーボクサー、ポリスボクサーなど、選手がどんなバックグラウンドをもっているのかを掘り下げることで読まれやすくなります。


いずれにせよ、記事のタイトルや写真は最初のフックになりますから、いかに興味をもってもらえるか。さまざまな角度から選手を紹介することを心がけています。


2016年に現役を引退してからは、講演活動にも力を入れる



ファンありきのオンラインサロン型コミュニティー


これまでのボクシング業界は、テレビや新聞、雑誌など、一方通行の情報発信だけに頼ってきたように思います。でも、これからはそれだけでは足りない。選手とファンをつなぐ双方向型のコミュニティーが必要です。


その一つの答えがオンライジンジムです。オンラインジムでは、選手を招いたイベントを行ったり、ボクシングの観戦会を開いたり、ボクシングの情報交換ができます。僕も定期的に記事をアップしています。


「選手とファンがつながるコミュニティー」という構想はずっと考えていました。どの形がベストなのか模索しているとき、堀江貴文さんやキングコングの西野亮廣さんが運営しているオンラインサロンからヒントを得たんです。


オンラインジムはオンラインサロンをベースにしていますが、ただ流行っているものを後追いしても成功しません。自分なりにアレンジする必要があります。そのときに考えなければならないのは、実際にお金を払うファンの立場に立つことです。


ジムに通うのはなかなかハードルが高い。試合を見に行きたいけど、一人で見に行くのはつまらない。ボクシングを語り合える仲間がいない。そんなファンたちが交流できて、楽しめる場にしたい。つまり、ボクシングというコンテンツありきということです。


そのため、一般的なオンラインサロンはカリスマありきですけど、オンラインジムは「自分のファンクラブ」にはしませんでした。スポーツの事例をいろいろ調べましたが、うまくいっている例は本当に少ないんです。


なぜかというと、サロンが選手のファンクラブになっているので、メンバーは限られるし、選手の知名度があることに加えて、本人が現役でないかぎり続けていくことが難しい。有名選手でもサロンのメンバーが1人や2人といったことがザラにあります。


やはりお金を払っている人を幸せにしないといけない。お金をもらっている人が幸せになってはダメです。ただのファンクラブにはない付加価値、それがファン同士が交流できるコミュニティーにあるんじゃないかと思っています。


現在は僕が先頭に立っていますが、あくまでもボクシングを知ってもらうための入り口としての役割です。将来的には僕が会長じゃなくてもいいんです。サロンそのものを残していきたい。会社と同じですね。



オンラインとオフラインを行き来して、選手とファンをつなぐ


オンラインジムとはいえ、オンラインだけで完結するほど甘くありません。いかにリアルの場をつくっていくか。オンラインジムは月額3000円ですが、オンラインのコンテンツだけに毎月3000円は払わないはずです。


ボクシング観戦会から取材現場の見学、さらに現役ボクサーや引退したボクサーと交流を深めることができるイベントまで、オフラインで楽しめるコンテンツをより多く用意しているのは、そのような理由からです。


選手とファンが交流できるイベントを開いて思うのは、選手にもファンにもいいことばかりだということです。


ファンにとっては、選手と直接会える、話せるという機会を楽しんでもらえますし、選手にとっても、ファンの声を聞くことでより強い気持ちでリングに上がることができます。


僕自身も現役時代はファンとの交流を大切にしてきました。ただ、実際に交流できる場は少なく感じていたんです。


これまで選手を招いたイベントは5回開催


こうした選手とファンが一体になって盛り上がれるコミュニティーは、これからの新しいボクシング文化をつくっていくはずです。


立ち上げ当初は、失敗の不安もありました。オンラインサロンは一度はじめたらストップできません。たとえメンバーが数人のまままったく増えなくても、簡単にはやめられないんです。


コミュニティーの形成は初動がすべてなので、手間と時間をかけましたね。とくに立ち上げのイベントです。ファンの交流会とオンラインジムの説明会をかねたものを企画したんです。


おかげさまで、オンラインジムはすでにメンバーが100人を突破しました(11月15日時点)。ボクシングで成功できれば、同じ規模感のスポーツにも応用できるはずです。それがスポーツ界全体への貢献にもつながると信じています。

 

ONLINE GYM ーオンラインジムー

 

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