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執筆者の写真大澤佳加

【地域通貨の基本②】不便な地域通貨のすごい長所

更新日:2022年5月23日



今、注目を集める地域通貨について、「めぐりんポイント」を運営するサイテックアイの大澤佳加さんが解説する本連載。第2回はいよいよ地域通貨のお話。地域通貨とはそもそも何なのか? その特徴や運用の目的に加えて、地域通貨の種類にも言及。基本の基本を学べる内容となっています。



地域通貨は便利な円をあえて限定させたもの


 第1回では、お金は便利な反面、利用先を限定できないために、地方でお金が回らない=地方の停滞を招いている。その状況を打開する手段として期待されているのが地域通貨だという話をしました。


 あらためて地域通貨を定義すると、「限定された地域で流通し、決済手段として使われるお金」です。地域内で流通させるため、外部環境の影響を受けづらく(ネットショップでは使えません)、地域の自立的な経済活動を支えることができます。


ここからもう少し、地域通貨の特徴を掘り下げてみましょう。それは「3つの限定」です。


(1)地域の限定

(2)目的の限定

(3)期間の限定


(1)地域の限定は文字どおり、都道府県や市町村、商店街など、利用できる場所を限定することです。(2)目的の限定はお店の形態など、目的に合致するような利用先を限定すること。(3)期間の限定は有効期限を設けること。円には有効期限はないので貯金することができますが、もし期限があれば、消費に回されるわけです。


 このように、地域通貨独自の特徴があるからこそ、特定地域での経済を活性化させることができるのです。


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地域通貨をつくる本当の目的


 地域通貨を流通させる目的は地域経済の活性化です。ただ、もう一つ大切な目的があります。それがコミュニティーの活性化です。


 地域通貨は3つの限定ができるとお話ししましたが、限定しただけで地域通貨が使われるようになるわけではありません。消費者にとって、どこでも使える便利な円ではなく、“わざわざ”地域通貨を使う理由がないからです。


 ではどうすればよいのか? 円では交換できない、地域通貨でしか交換できない何かが必要です。その一つが「コト」です。たとえば、私たちが運営する「めぐりんポイント」では、プロのバスケットボール選手を地域ポイントで学校へ呼ぶ取り組みを行っています。


 プロの選手をイベントに呼ぶとなったら、それなりのコストがかかりますが、めぐりんポイントでは加盟店でのお買い物でポイントを貯めてもらい、3万ポイント(1ポイント=1円)で選手を呼ぶことができます。ふつうなら3万円でプロ選手を呼ぶことはできません。しかし、共に事業を通じて地域貢献を行うという大義名分があれば、それが可能になるのです。言うまでもなく、地域内での消費も喚起できます。


 このように、地域通貨は地域の特性に合わせた付加価値と交換することで、地元とのつながりをつくることができます。それが結果として、コミュニティーの活性化にもつながります。


 なぜ、コミュニティーの活性化が大事なのでしょうか。地域内での活動は、必ずしも経済的な指標で計れないものがたくさんあります。たとえば、清掃活動などのボランティア、健康経営、地元スポーツチームの応援……このような非経済活動は、もともと互酬を基盤とするコミュニティー活動でした。


 言い換えれば、お金を介さない助け合いです。本来は互酬でカバーされるべきものが、人口減少によってコミュニティーが弱体化してむずかしくなり、行政でもまかないきれなくなってしまいました。


 もしこれらを経済活動として顕在化することができれば、地域内の潜在的な資源を動かし、地域を活性化させることができるというわけです。



地域通貨には「地域マネー」と「地域ポイント」の2種類がある


 さて、ここまで地域通貨の特長と目的を説明してきましたが、もしかしたら、少し混乱している方もいるかもしれません。私たちが運営する「めぐりんポイント」は文字どおり「ポイント」であり、はたしてそれは地域“通貨”なのか?ということです。


ひと口に地域通貨といっても、紙やプリペイドカード式、非接触型カード、QRコードなど媒体もさまざまなので、いっそう混乱してしまうかもしれません。じつは、地域通貨はざっくり2種類に分けることができます。それが「地域マネー」と「地域ポイント」です。


 最も大きな違いは、適用される法律です。地域マネーは資金決済法、地域ポイントは景品表示法です。適用される法律が違えば、当然ながら運用方法は大きく異なります。


 具体的には、地域通貨を入手する方法が違います。地域マネーは前払い方式手段(商品券やプリペイドカードのように、最初に現金を払って地域通貨と交換する)。一方、地域ポイントはみなさんがふだん使っているポイントカードと同じで、買い物をしたときに「100円で1ポイント」のような形で貯まります。使い道はどちらも同じ。公共施設での支払いや加盟店での買い物、寄付だってできます。


 この運用方法の違いはとても重要です。ここをあいまいにしておくと、地域通貨は必ず失敗します。第3回では、これまで地域通貨はたくさん生まれたものの、ほとんど成功していない理由を探っていくことにしましょう。

 

大澤佳加(おおさわ・よしか)

香川県生まれ。香川県立志度商業高等学校卒業後、営業、販売業、飲食店経営などを経て、2013年にサイテックアイ株式会社に入社。加盟店営業に従事し、2016年にサイテックアイ株式会社代表取締役に就任。「ふるさとの愛とありがとうをかたちに」をモットーに、地域ポイント「めぐりんポイント」を運営している。

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