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執筆者の写真Byakuya Biz Books

EC専門のアスクルだからできた、PB商品「ロハコウォーター」誕生の裏側

更新日:2022年4月29日



アスクルが運営するECサイト「LOHACO(ロハコ)」で売れているオリジナル商品がある。「LOHACO Water(ロハコウォーター)」というペットボトルのミネラルウォーターだ。30~50代前半の女性をターゲットにするロハコでは多数のNB商品(ナショナルブランド/メーカー品)を取り扱うが、最近は独自価値を生み出すべく商品のPB化(オリジナル商品開発)が進んでいる。そしてその一つであり、成功を収めているのがこのロハコウォーターなのである。単価の低いミネラルウォーターをわざわざPB化したのにはどんな意図があるのか? そこにはEC事業に特化したアスクルならではの考え方があった。


LOHACO生活用品統括部・谷口将太さん

飲料食品チーム。飲料MD(マーチャンダイジング/商品計画、商品化計画)RTD(蓋を開けてすぐにそのまま飲める飲料)というボトル飲料のマーチャンダイジング担当。商品開発のチームも兼務し、大手NB(ナショナルブランド)のマーチャンダイジングと商品開発を含めて担当している



集客率ナンバー1のミネラルウォーターをPB化


――ロハコではNB商品(ナショナルブランド/メーカー品)だけでなく、オリジナル商品も多く取り扱っていますよね。


そうですね。ロハコでは、「いつもの商品」と「ここでしか買えない商品」があります。いつもの商品は大手メーカーさんのNB商品。そしてここでしか買えない商品はPB商品(オリジナル商品)です。


中でもロハコウォーターはPBを代表する商品と言えます。というのも、ロハコの来店目的で最も多いのが、ペットボトルのミネラルウォーターなんです。


――そんなに売れるんですか?


開発当時、お客様が最初にカゴに入れるのはミネラルウォーターでした。ロハコは日用品を含めさまざまな商品も取り扱いしていますが、その中でも突出しています。やはり重い商品が玄関先まで届くことに価値を感じるニーズがあるのだと思います。


ただ、スーパーでは2.0Lが100円を切る価格で販売されているものもありますから、収益面では厳しい商材ではあります。かつ、我々はそれを玄関先まで運ぶので物流費もかかります。当時は宅配クライシス(労働力不足と配送費値上げによる物流費高騰)が我々の直目した課題でした。そのため、それまではミネラルウォーターカテゴリでのPB化は必須という認識だったんです。


――儲からないから止める、という決定にはならなかったんですね。


ロハコは日用品ECなので、ミネラルウォーターは欠かせない商材です。利益が少ないから止めるのではなく、もっと低価格、効率的にお客様に提供するにはどうしたらいいか、という発想から始まりました。


そして着目したのが、ほかの商品との同梱によるお届けです。大容量のミネラルウォーターはケースで買われることがほとんどなのですが、もしミネラルウォーターだけを送るとなると送料は別にかかってしまう。ですから、ほかの商品と合わせて購入していただければ(3300円以上)、送料を吸収することができます。


ところが、一般的なNB商品は1ケース6本入りがほとんどです。そのために出荷小口割れが発生し、お客様へのお届けが複数箱となってしまうだけでなく、物流費が増加してしまう(ほかの商品と同梱できずに複数の荷物が分かれる)。また、ペットボトルのままでは形状が不安定なため、同梱すると箱の中で倒れてほかの商品を破損してしまう、という課題も抱えていました。


アスクルが開発したミネラルウォーター「ロハコウォーター2.0L」


――なるほど。一つの箱に同梱できればいいと。


お客様の受け取りやすさを大切にして、ロハコウォーターをほかのご注文商品と合わせて1箱でお送りしたいと考えました。


そこで、同梱できて箱の中で動かない方法として、箱の底面サイズから5本を横1列に並べる梱包形状にすればいいことがわかりました。その結果、開発したのがこの5本セット荷姿です。


大容量の水を横1列にすることで、1オーダー1ボックスが可能になりました(ひと箱に同梱でき荷物が分かれない)。また、横長のスリムなデザインで収納性に優れるので、お届け後、家具と家具のすき間などに収めることもできます。


箱の底面に入れた状態


――この外箱は既製品ですか?


いえ、そういうケースを作っている工場は一つもありませんでした。最初は各飲料メーカーに5本入りのケースを持ちかけたのですが、共感はしていただけても、そうした製造ラインを持っていなかったのです。交渉を続ける中で嬬恋銘水と共同で、開発することになりました。


――発売後の反響はいかがでしたか?


お客様には高く評価していただいています。実際、ロハコウォーターの売上は順調で、2018年7月にロハコウォーター410mlを発売。ロハコウォーター2.0Lは2020年12月にリニューアルし、さらに2021年5月にはロハコウォータースパークリングもローンチしました。ブランドとしてはずっと順調に推移していますね。


収納性とデザインを両立



ラベルレス化+小型化を実現した「ロハコウォーター410ml」


――ロハコウォーターはラベルレスが特徴的ですよね。


ラベルレスはこの「ロハコウォーター410ml」から採用したものですね。1箱20本入りの小型商品で、ラベルレスでエコ、小型化することで持ち運びやすさも兼ねた商品です。


410mlでは角型のボトルを採用していて、一般的な555mlのNB商品と高さを同じに保ったまま設計しました。小型化した理由は、社内アンケートで女性の60パーセントが500mlは飲みきれないサイズだとわかったこと。それに加えて、当時は大手メーカーさんでも女性をターゲットとした500ml以下の商品が出てきたタイミングでもありました。


ラベルレスだが計8種類のデザインも特徴。キャップにはロハコウォーターブランドすべてに入っているQRコードが。ここからロハコの特集ページに誘導し、必要な情報を見られるほか、そのまま次の買い物を促すこともできる


――ラベルレスだとすごくシンプルなデザインなので、生活空間にもなじみやすいのがいいですよね。


当社のMDはあるカテゴリー専門というよりも、以前は文具担当だったとか、日用品担当だったという人もいて、あまり業界の固定概念にとらわれることなく、お客様目線で発想していくんです。黒キャップはまさにそのあらわれなんですね。今でこそ黒キャップの飲料は見かけると思いますが、当社が開発した当時は、水に黒キャップはタブーでした。白、水色、緑といった淡い色が定説だったんです。


黒だとちょっと化粧品のように見えると言われたり。ただ、当社ではどちらかというと、店頭での見え方よりも、お客様がテーブルに置いたときの見え方や、使いやすさを考えて設計するんです。


――そうか、店頭を考えなくていいんですね。


アスクルやロハコのデザインポリシーでは店頭よりも使用シーンを考えること。これはそのほかの商品もご覧いただければ、なんとなく伝わるのではないかと思いますね。


410mlの外箱は下から1本ずつ抜いていくダルマ落としのような仕様に。採寸はA4サイズで、オフィスでもジャマにならない設計で、この410mlが20本、1ケースに入っていて合計8.2kg。女性でも取り出しやすいようになっている


――昨年5月には「ロハコウォーター スパークリング」も発売されるなど、ラインナップも拡大していますね。


そうですね。開発には無糖炭酸水の需要は自家飲料も増えて市場が拡大していることが背景にあるのですが、「スパークリング」もロハコウォーターのコンセプトである「同梱できる」「ラベルレス」は踏襲しています。


ロハコウォーター スパークリング


ロハコウォーター2.0Lは横一列に並んで同梱できる、410mlの小型版は1ケース20本を2箱買っても同じ箱でお届けすることができる。スパークリングは入数を工夫していまして、15本入りを2箱買っても1つの箱で届けられます。そのため、410mlとスパークリングを1ケースずつ買っても同梱できるのです。


この15本入りは工夫したポイントで、購入頻度や購入間隔を見てみると、だいたい25~30日で購入されているんです。となると、1箱15本入り設計にすれば、2ケースを1つの箱で送ることができます。


ロハコウォーター410ml2ケースが1つの箱に同梱できる



商品開発から物流までを担うアスクルだからできたこと


――「ロハコウォーター」のシリーズは同梱へのこだわりが徹底していますね。


ECというと、たいていは家電やそのほかの高単価のものを扱います。一方で、我々は日用品を届けることに主眼を置いていますから、配送料を吸収するためには、安くて重くてかさばるものをたくさん買っていただくことになります。


どうしたら一緒に買い合わせていただけるか、同梱できるかを商品採用やPB開発の際の基準になっています。だからこそ、最小限の梱包でお届けすることを最優先に考えます。


こちらはロハコウォーター スパークリングを同梱したところ


――いい商品なら多少高くてもいい、という発想にはならないんですね。


ロハコウォーターを1本200円で売れれば、ここまで同梱にこだわる必要はないかもしれませんね。でもそうなると、お客様がロハコを利用する理由が一つなくなってしまう。当社は2カ所の自社センターからお届けしています。つまり、おそらくほとんどのお客様にとって、当社のセンターよりも近いところにスーパーやお店があるはずなんですよ。


近所のスーパーで普通に買える商品に対して2倍の値段で売ったら、「それなら、スーパーで買うよ」となってしまう。一般的な小売さんはレジまでがお客様との接点だとすると、当社は玄関先に届けて、消費するまでを考えています。


だからこそ、ここまでお話ししてきた、「ラベルレスで捨てやすい」「ストックしやすい箱デザイン」「ECでほかの荷物と同梱可能(=手ごろな価格で提供できる)」といったことに力を入れているわけですね。


――なるほど。


物流コストが高騰しているのは、取扱量の増加やドライバー不足など、複合的な要因があります。その点、当社は商品開発から、物流の配達まで一気通貫して担っているので、一連の流れの中で――たとえばセンターの中では人ではなくAIを活用したり――少しずつ努力して、コスト削減が実現できています。同梱の工夫もその一部と言えますね。


宅配クライシスに加えて、環境問題にももっと取り組む必要があります。特にコロナ禍でゴミの量も増加し、人々の関心はますます高まっています。これからは環境配慮もお客様のベネフィットとして追及していきたいですね。

 

LOHACO by ASKUL

 

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