私たちの体にはストレッチが必要である。ストレッチは筋肉を伸ばして柔軟性を高め、肩こりや腰痛を緩和したり、ケガを予防できたりするからだ。そして体が万全な状態にあってこそ、日常生活で十分なパフォーマンスを発揮できる。その前提に立ち、ストレッチを重要なビジネススキルとしてあらためて考えてみたい。執筆をお願いしたのは、『背中握手で、ねこ背が治る!』の著者でもある篠丸達也先生だ。第1回はストレッチがビジネスにもたらすメリットについて。
香川県の田んぼの真ん中で30年以上接骨院をしています
平成元年に開業した篠丸接骨院は、当時20代半ばの父親が地域の接骨院や整形外科で修行した後に開いたところでして、私はその2代目院長です。仲多度郡多度津町という、順調に高齢化に向かって進む穏やかな日本の地方都市のお手本のような町に私の院は建っています。近くに大きな病院も少なく、健康に関するさまざまなお悩みや疑問に応えるために、コツコツと研鑽を積んでまいりました。
私が院を引き継いだ頃は、車のナビが院を案内できず、電話でお問い合せをいただいた方を車でお迎えに上がったり、紹介者の方がわざわざ一緒に連れてきてくださったりなど、いろいろ不便なことがありました。しかも接骨院の2階は住居になっているので、地域の皆様からは、「ド田舎にある家庭的な接骨院」「むしろ家」といったような、一定の評価をいただいています。
なぜか(……と言えば、来ていただいた方に失礼ですが)そのような場所まで時間をかけ、四国四県に留まらず、関東や九州からも私たちの施術を受けるためにお越しいただいていました。ほかの治療院の先生向けの技術セミナーを開催していたこともあり、そんな私たちの技術も選ばれていた一因だったのでしょう。
では、私のような田舎柔道整復師(接骨院の先生が持っている国家資格のこと)が、なぜこちらでweb連載を始めることになったのか。それは、2019年に出版した『背中握手で、ねこ背が治る!』(白夜書房)というストレッチ本がきっかけになっています。出版したことは、こちらも今思っても本当にすごいことです。それ以来、母校や地域の皆さんに呼んでいただき、講演活動を続けています。そのときの縁が現在に繋がっています。
『背中握手で、ねこ背が治る!』
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ストレッチがビジネスにもたらすメリット
これには大きく分けて2種類あると感じています。1つ目は、仕事中に健康上のストレスが軽減するということ、2つ目は、見た目が変わるということです。
1つ目のメリットに関しては想像しやすいと思います。単純に疲労がたまりにくく、元気に仕事に打ち込めるということです。よく言われることではありますが、やりきると本当に変わります。当院に来られる方の中にも、健康になることで仕事の成果が上がったり、残業をしなくなったりなど、仕事のパフォーマンスに影響を感じている方は多数いらっしゃいます。
2つ目のメリットの見た目に関して。こちらはオーダースーツを取り扱っている社長さんに言われたことがあります。「バランスのよい胸元をデザインすることで、印象はガラッと変わるんです。先生がつくるよい姿勢も、ビジネスマンに同じ効果を与えますよね」」。たしかに、姿勢は第一印象に大きく作用します。
ねこ背で元気のない印象の方より、背すじがピンと伸びて元気な印象を与える方からお話を聞きたいと誰もが感じるはずです。第一印象から相手にポジティブな印象を与えることは、ビジネスシーンにおいて十分メリットと言えるのではないでしょうか。
ストレッチは最強のビジネススキルと呼べるのか?
ストレッチと同じように、近年筋トレもビジネスマンに必要なものの1つと言われることが増えたような気がします。むしろ、ストレッチよりも筋トレのほうが肉体的にも精神的にもやってる感や達成感があり、見た目に表れやすいといったような特徴から、例に出されることが多い印象があります。私はこのことを否定するつもりはありません。
ただし、この記事をお読みになっているあなたが、ビジネスマンとしてよい成果を挙げ続けるために、「健康的な身体と心をつねに磨き続けること」といったようなことを求めているのであれば、「ストレッチは最強のビジネススキルの1つになりうる」と思います。
私の経験上、健康的な身体と心を手にするための行動を起こす前に、最低限の健康状態(痛みや不調に関する悩みが小さいこと)が必要不可欠であると考えています。この状態になれていないと、始めてはみたものの、「体調を崩す」「継続できない」などといった問題にぶつかりやすいからです。
筋トレやスポーツを趣味にすることは非常にすばらしいことです。ただし、そのすばらしいことを長い間続けていくことは、それらを始めること以上に大切なことであると私は思います。続けていくために必要な身体を整えるストレッチは、ある意味「最強のビジネススキル」と言えるのではないでしょうか。
今回の結びにあたり、みなさんの身体は今柔軟性を保つことができているのか、試してみてください。写真のとおりの姿勢(背中握手)を取ることができるでしょうか。「左右どちらも指先が触れる程度まではできる」という方は、第一段階クリアです。
次回は、背中握手ができるようになるストレッチの紹介と解説はもちろん、どんなビジネスシーンで役に立つのかということも交えながらお話ししていきます。
篠丸達也(しのまる・たつや)
篠丸接骨院 院長。1986年、香川県仲多度郡多度津町生まれ。2009年に四国医療専門学校を卒業し、国家資格を取得。2011年にしのまる接骨院を開院。その後、父親が経営する篠丸接骨院を継ぎ、現在に至る。骨盤矯正やねこ背の矯正のほか、寝違え、五十肩、ぎっくり腰、膝の痛みなど、幅広い症状に対して治療も行う。診断から目標設定、改善、メンテナンスまで、患者さんとのコミュニケーションを重視する方針が評判を呼び、年間7000名、13年の治療で8万人以上を診療している。
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